ドル/円相場は、92~94円のボックス上限を試す展開になっている。25日早朝には一時94.77円を付けており、新高値を更新している。次期日銀総裁人事を巡る動きが本格化する中、改めて円サイドからドル高・円安を進める動きが活発化している。
まだ政府からの正式発表は行われていないが、25日付けの日本経済新聞は、アジア開発銀行(ADB)の黒田東彦総裁を白川・日銀総裁の後任とする人事案を固めた模様だ。また、副総裁には岩田規久男・学習院大教授の名前が挙がっている。黒田ADB総裁は財務省出身だが、これまで日銀の政策を強く批判してきており、積極的な緩和論者として知られている。また、岩田教授も「リフレ派」を代表する経済学者であり、安倍政権の脱デフレ政策は新体制の下で強化されることはあっても後退する可能性は低いだろう。両氏とも依然から名前の挙がってきた有力候補であるが、マーケットでは岩田一政・日本経済研究センター理事長、武藤敏郎・大和総研理事長といった有力候補との比較では、脱デフレ政策に対する信頼を一段と高めることが可能な人事と言える。まだあくまでもメディアの報道段階に留まっており、野党の同意を得られるのかなど不透明感も強いが、日銀総裁人事をきっかけに改めてドル高・円安圧力が強まり易くなっていることは間違いないだろう。
一方のドルサイドでは、20日に米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録(1月29~30日開催分)が公開されたが、資産購入を一段と拡大することに対して、参加者の意見が割れていることが確認されている。26日のバーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長の議会証言では、ある程度まで緩和政策に対する信認が取り戻される可能性が高いが、米金利が高止まりしている現状では、ドルサイドの要因でドル高・円安傾向にブレーキを掛けるシナリオを描くのは難しい。緩やかなペースでドル/円相場は上値切り上げを試す展開が続く見通し。警戒すべきは、欧米の「テール・リスク」が顕在化する展開になる。
今後1週間の予想レンジは、93.00~95.00円。